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見限らないで
 なんで私、こんなに泣いてるんだろうと思うことがある。涙がとめどなくあふれて息が苦しくなることがある。子供のように声を出して泣きじゃくってしまうこともある。それからやがて涙が枯れて、疲れて布団に横になっていると、たいてい自分のダメ出しが始まる。
 今日は「私って結局、ただの怠け者のひきこもりなんじゃないの」という考えに行き着いた。もううつ病なんて本当は治ってるんじゃないの。

 というのも、昨日だったか「ザ・ノンフィクション」という番組で埼玉の「パンダ理容室」というお店の話をテレビで見たからだ。「従業員は家族」というモットーのマスターが本当に素晴らしい人だった。若い従業員の中には、借金癖のある子や遅刻欠勤脱走を繰り返す子もいるが、最後まで決して見限らずに、本物の家族以上に親身になって理容師になるまで育てるのだ。
 これを見ていたら私は自分が恥ずかしくなった。うつ病という大義名分を振りかざし、仕事もしないで寝てばかりいる。口ばっかり。プライドばっかり。ひょっとして私の周りの人が優しすぎるのではないか。それとも私は見限られてしまったのか。もう関わりたくなくて見て見ぬフリをされているのか。もっと親身になって本気で叱ってくれる人がいれば、もしかしたら私もやる気が出て働けるようになるのではないか。
 そして、しまいにはこうして自分の怠け癖を人のせいにしている自分が嫌になった。

 うつ病なのか、怠け癖なのか。精神的な問題って難しい。人間はみな精神病だと聞く。それは程度の差だけであると聞く。次に心療内科に行ったらまた聞いてみよう。私は本当にうつ病ですかと。最初に聞いた時は先生に「だって昔はそんな性格じゃなかったんでしょ?」と言われた。この前泣きながら聞いた時は「うつ病です」と断言された。
 昔の自分の考え方がわからない。なんであんなに一心不乱に働いていたのか思い出せない。洗脳されていたかのように生真面目に働いていた。本当はずっとこうやって怠けたかったのかもしれない。これがホンモノの私なのかもしれないではないか。

 ちなみにパンダ理容室のマスターは今年で現役を引退し、息子さんに店を譲ったそうだ。最後に息子さんに言った言葉に人柄がよく表れていた。

これから君たちが地位を残していきたいのか、人を残していきたいのか、金を残していきたいのか。それは君らの人生だから君らが決めればいいんだけれども、一番難しいのは人を残すこと。

これまで決して人を見限らなかったマスターならではの重みがあった。

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ブランコ
2007.11.05 Mon 10:49 | 詩・想 | 小説・文学
キャッチボールがしたかった。
広場のすみっこでボールとグローブを持って
キャッチボールの相手を探していた。

みんなはプロレスごっこをして遊んでいた。
私はなかなかその輪に入れずに
誰かが呼んでくれるの待っていた。

「ぐりえちゃんも入れば?」
誰かが声をかけてくれた。

でも私はキャッチボールがしたかったんだ。
みんなのグローブはそこらじゅうに放り出されたまま。
私は新しく買ったグローブを握り締めて目を落とした。

「ぐりえ、プロレスはできないの」
そのうち誰かがキャッチボールを始めるかもしれない。
私は待つことにした。
ブランコに乗って待つことにした。
ブランコを一心不乱にこいでいると
待つことの寂しさも感じないから。
風が気持ちいいから。

ふと気がづくとあたりが暗くなっていた。
「またねー」「ばいばーい」
みんなが帰っていく声が聞こえる。
私は泣きそうになるのを堪えてブランコをこぎ続けた。

「ぐりえちゃんはまだ帰らないの?」
振り向くと友達の一人が
不思議そうな顔をして私を見ている。

「ぐりえ、プロレスが終わるの待ってたの」
「ええ?ブランコしに来たんじゃなかったの?」
私は言葉を失った。
寂しさと悲しさと悔しさが入り混じって
ブランコを飛び降りると訳もわからず
ボールをその子に思い切りぶつけた。
そして走った。
とにかくそこから立ち去りたかった。

追いかけてきたって逃げてやる。
しばらく走っておそるおそる後ろを振り向くと
遠くにポツンとその子の姿があった。

その子はしばらく首をかしげていたが
やがて自分の家の方へと歩き出したようだった。

それから私は毎日ブランコに乗っている。
来る日も来る日もブランコに乗っている。
雨の日も風の日もブランコに乗っている。
買ったばかりのグローブは
近所の犬にあげた。

BUMP OF CHICKEN 「アルエ」


「私は一人で平気なの!」