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やさしい母
 誘われるままに、ふらふらと外に出て母とランチを食べた。私があまり具合が良くないことを言うと、母はとても心配して「もう帰りなさい。」と言ってくれた。夜ご飯のお弁当を買って持たせてくれた。

 さんざん干渉を煙たがっていた私は、何か母の事を誤解しているのだろうか。涙が出た。

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ウイルスの奇妙な生き方
 昨夜放送の「爆笑問題のニッポンの教養」を録画して見た。『ウイルス その奇妙な生き方』というテーマで、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの、高田礼人副センター長を訪ねていた。高田先生は、世界の感染症の現場に赴くウイスルハンターだ。

混同している人が多いですけど、ウイルスと細菌は全然違う生き物なんです。

と、高田先生は言う。細菌は自分で栄養を摂取して、自分で増殖していくことができるが、ウイルスはそれができない。ウイルスは生きている細胞に寄生する、完全なる”寄生生物”なのだ。

 寄生生物にとって、宿主を病気にしたり殺したりするのは、自殺行為なのでは?と爆笑問題が聞くと、それはその通りだと先生は笑う。

 病気を起こしちゃうようなウイルスっていうのは、それはアクシデントなんです。ウイルスにとっても不本意なことなんです。
 だから”エボラ出血熱ウイルス”みたいに、バタバタ殺しちゃうようなウイルスっていうのは失敗例。ウイルスも『あれは失敗したなー』と思ってると思いますよ。


 ウイルスは、どんどん形を変えてたくましく生きているわけではないのだそうだ。本当はウイルスに意思があるわけではないから、いろんなバリエーションがある中から、それに適応したものだけが妥協しながら生き残っているだけなのだという。そしてそのバリエーションを生むのは、ただの”突然変異”なのである。
 なんでも、ウイルス遺伝子を増殖させる酵素”ポリメラーゼ”がものすごく間違えやすいいい加減なものらしい。考え様によっては、色々な宿主に対応するために突然変異しやすくできているともいえるが、とにかくウイルスの生きるための戦略は適当であり、適当だからこそ生き続けられるのだという。

 人間だって、ウイルスがいなきゃ生きていけないわけではない。ウイルスに存在意義はない。突き詰めれば、ウイスルが絶滅して困る生物はいないのだ。

 けれども新型インフルエンザの世界規模での大流行(パンデミック)に対して、全世界が警戒を強めている。高田先生たちも、コウモリやカモなどの野生動物がどんな微生物をもっているか、網羅的にあちこちからあつめてきて、ワクチンに使えるようにしたりするなど、”先回り作戦”を展開しているという。

 生き方がいい加減で特別な存在意義もないウイルス。しかし全人類を恐怖に陥れるウイルス。必死に生きる意味を探して見つからずに絶望したりしている”私”という人間が、ひどく間抜けに思えてきた。

スピリチュアルブーム
2008.06.11 Wed 11:32 | ドキュメンタリー | テレビ・ラジオ
 昨日のクローズアップ現代は、『過熱するスピリチュアル・ブーム』というテーマであった。

 今、宗教は信じないけれども前世や霊は信じるといった人々や、霊視や占いなどで心の不安を和らげてもらったり恋愛や仕事などの悩みのアドバイスを受けるといったことが増えているという。いかにも宗教を取り上げられた日本的なブームだと思った。特に目立つのは、30~40代の人々だ。
 私は占いはそんなに信じないほうだが、スピリチュアルなものには昔から多少なりとも関心がある。スタジオゲストが精神科医の香山リカ先生ということもあって、興味を持って番組を見た。

 まず紹介されていた、派遣の仕事を点々とし一人大きな不安を抱えているある30代の女性は、人生を導いてくれるという占い師を見つけて、なんでも相談していた。

親には相談しないので。言っても聞き入れてもらえない。友達にも言わないですね。ほとんど結婚してる子ばっかなんで、電話も気を使ってできないですよね。

わかる。親は理解をしてくれない。リアルの友人には話しづらい。そんな社会で、私も占い師とまではいかないが、顔も知らないネットの友人のほうが話をしやすいのが実情である。だからこの女性の気持ちはわかる。

 また、14年前に創業した電話による占い会社では、最近、仕事に悩みを抱える30代の男性から相談が殺到しているという。この会社の占い師は言う。

弱音が吐けない、本音で人と語れないっていうところで行き場がないので、全然違うところに来られて話をする。昔の占いっていうよりは、コンサル的?

ここのところ会員で目立ち始めているのは、企業経営者たちだという。

 スタジオゲストの香山先生は、30~40代には大きく分けて2つ特徴があると言う。

  1. 厳しい成果主義に晒されている。
    うまく努力が実れば大きな報酬も手にできるが、失敗した場合は自己責任ということで誰も助けてくれない。いつ負け組みに転じるかと言う不安を誰もが抱えている。

  2. 自分らしさ、自己実現、成長といったことへの非常に強いこだわりを持つ。
    普通に働いて生活しているのでは平凡すぎて物足りない。何か特別に輝いて自分らしさを手に入れなければいけないんじゃないか、という焦りを感じている。

 誰もがこんなはずじゃなかったこれでいいんだろうか?と感じている中で、『あなたには無限の可能性がある』、『あなたには輝く権利がある』、とその人を強く自己肯定してくれる占い師やスピリチュアルカウンセラーが、肯定感を与えてくれるのだ。

 その人が不本意な理不尽な状況にあるのは、決してその人の才能や努力のせいではなくて、オーラのせい前世のせい宿命のせい、あなた以外のところに責任があるという物語をつくってくれる。そういう風に言われることによって、自分の中にある才能を信じたり能力を信じたり、今うまくいかないのは私のせいじゃないんだと楽になれる。

これは恐ろしい話である。これなら私だって、占い師やヒーラーになれそうである。実際、ブームを悪用した悪質商法や詐欺も急増し、全国の消費 生活センターに寄せられた相談は2006年だけで3,000件を超えているという。

 こうしたブームの背景には、社会のコミュニケーション不足というひずみがあると、香山先生は語る。

 おそらく会社でも成果主義の中では、同僚もみんなライバルで気軽に自分の弱みを見せることもできない。地域社会が崩壊しているので近所のおじさんおばさんに話すこともできない。友達も空気を読むみたいな付き合いなので本音をいえない。病院にいってもお医者さんは体全体をみてくれるというよりは、数値とか病気だけを見てしまう。
 自分全体を見てくれる人、その人全体を包み込むように受け入れてくれる人がいない中で、本当に本音を割って相談する相手が携帯電話の占い師だけ。雑誌で見つけたヒーラーだけ。

また、香山先生は、『本当の精神療法は時間がかかるものだ』とおっしゃる。

 人生の大きな問題を解決するには時間もかかるし大きなエネルギーが必要なのに、スピリチュアルブームに走る人は、時間がかかることは即断即決の時代なので無駄なんじゃないか、待ちきれない、目に見えるわかりやすい指針やメッセージがほしい、と思ってる人たちが多いのも事実。

なんでも便利ですぐに結果を求めるようになってしまった世の中。せっかちな私たちのほうにも、大いに問題があるのではないだろうか。

 香山先生は、最後にこうアドバイスをくださった。

 納得いく答えというのは、自分の中からしか出てこないものですよね。だから、なにかいろんなアドバイスやメッセージを聞いて参考にして、それを自分で考えるための材料にするのは悪くないと思う。非常に落ち込んだときに励ましのメッセージを得て、また考える力にするというのはいいと思う。
 けれども、まったく自分の人生とは関係のない誰かに、自分ではよく理解できないスピリチュアル的なことで、大事な就職とか結婚とかそういったことを決定してもらうというのは、自分の力で決定したことにはならない。後になってから、『私は本当の気持ちだったのかな』と悩んでしまうことも出てくると思います。
 やっぱり、自分の意思で決定すると言うことを大事にしてほしい。

 こういう話を聞くたびに、私はやはり”話を聞いてあげること”、”話を聞いてもらうこと”の大切さを痛感するのである。周りの人が話を聞いてあげないから、誰にも本心を打ち明けることができず自分に自信が持てない孤独な人々が増えていくのだ。そしてこういう、怪しげなブームで詐欺的商法にひっかかる人も出てきてしまうのだ。

 私はできるだけ、スピリチュアルとかではなく、”人として人の話を聞ける人”になりたいと思うのである。