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あるがままに
2008.06.16 Mon 09:48 | ひとりごと | 心と身体
 先週は何日か外に出ることがあった。気がつけばもう6月も半ばになっていて、そろそろ日差しが強くなっていた。

 久しぶりに外に出ると、このところ異様な格好の人たちに会うことがある。黒い傘に、黒い帽子、黒い長袖長ズボンの女性だ。初めて見たときはなにかの宗教なのかと思ったが、これらはれっきとした”紫外線対策”なのだそうだ。
 こうした格好は、特に中高年の女性に多いような気がする。テレビでみのもんたさんあたりが、紫外線対策について特集でもしたのだろうか。日本人は、なにかと右へ倣えでいけない。誰かが”コレがいい”と言うと、一斉に同じ事を始めるのでとても奇妙である。

 少し前のことになるが、私は4月に「NHKスペシャル」で見た『病の起源 第2集 骨と皮膚の病~それは“出アフリカ”に始まった~』という番組を思い出した。

 およそ20万年前にアフリカのサバンナで誕生したヒト、ホモ・サピエンスは、強烈な紫外線から身を守るために褐色の肌を獲得した。しかし、およそ6万年前、アフリカを出て生息域を世界へと広げる過程では、今度は褐色の肌がビタミンDを作るのに必要な紫外線をも遮断してしまうという問題が生じた。この事態に、ヒトは北へ向かうにつれ肌の色を薄くし、紫外線とのバランスを取った。
 こうして生まれた肌の色の多様性が私たちヒトの多様性を生んだ。

(番組ホームページより)

つまり私たちの肌の色は、移住先の紫外線量に合わせて、何千年も何万年もかけて人類が適応してきた証なのだ。実際に、紫外線量からそれに適した肌の色のを世界地図に表示してみると、だいたいそこに住む人の肌の色と同じになったというデータもあった。

 しかし現在、高度な文明を手に入れたヒトは、地球規模の移民や、ほとんど太陽に当たらない生活など、自らの適応に逆らうような行動をとっている。その結果、皮膚がんやくる病、そしてビタミンD不足といった、進化の中で解決してきたはずの病に悩まされるようになった。

番組では、イギリスに移住したインド人家族の子供の歯がなかなか生えてこない問題や、オーストラリアに移住した白人たちが皮膚がんに苦しんでいる問題をやっていた。また、北極圏に住む肌の黄色い先住民”イヌイット”がアザラシの伝統食を食べなくなってきたことで、ビタミンD不足からくる病気に悩まされているという問題もやっていた。

 私は番組をみて、なんでも白人の真似をするようではいけないなあと思った。今私たちの肌が黄色い事には意味がある。今私たちがここに住んでいる事にも意味がある。文明技術を駆使すれば、地球上のどこでも住めるし、住環境を変えることもできるし、肌の色を変えることもできるかもしれない。お金さえあれば、テレビで見るハリウッド女優の生活をそっくりそのまま真似することができるかもしれない。
 けれどもそれは、日本人である自分のとるべき行動ではないのだ。氾濫している”紫外線対策”情報は、本当に私たち黄色人種に必要なことなのか疑問ですらある。

 ちなみに紫外線を防ぎすぎるとどのような弊害があるか。番組ホームページに記述があった。

 太陽光に含まれる紫外線を皮膚に浴びることで作られるビタミンD。このビタミンDが不足すると、カルシウムの小腸での吸収や骨への吸着が妨げられ、骨がもろくなってしまう。ビタミンD不足は、さらに歩行速度やバランス、そして筋力の低下を招き、転倒の危険を増すことも分かってきた。

やはり人間は、”あるがままに”生きるのが一番だ。無理に自分を変えようとするのは、肉体的にも精神的にも、もうそろそろ疲れてきた。

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