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孤独と向き合う
2008.07.20 Sun 20:48 | NHK教育 | テレビ・ラジオ
 昨日放送していたNHKの「一期一会」を見た。『"孤独"と向き合う話』というテーマだった。
 テーマにとても興味があったのだが、悩んでいたのは高校生だった。思春期の”孤独感”は、大人になってからのそれとはまたちょっと違うような気がするなぁと思いつつも、番組を見た。だが意外にも、と言っては失礼だが、奥の深い内容であった。

 富山県の高校2年生牧田恵実さんは、美術部に所属し、『人間の悩みや苦しみは他人にはわからない』という世界観を、グロテスクな絵柄や黒い色使いで表現していた。小学生の頃は明るかった恵実さんだったが、中学ごろから人の顔色ばかり気にするようになり、自分の殻に閉じこもるようになったという。

人生って言うのは、1人で生まれてきて1人で死ぬんで、そこから言っても孤独だし、やっぱりその孤独と向き合って生きていかなきゃいけないこともある。

そう悟ったように言う恵実さんだったが、時々自信がなくなるときもあり、他の人の話も聞いてみたいと番組に応募したそうだ。

 これに対して『人は決して孤独じゃない』と、人の笑顔をテーマに写真を撮り続けているのは、大阪の定時制高校に通う北浦加奈さん。いつも笑顔のチャーミングな女性だった。実は北浦さんは中国人。祖母が中国残留孤児ということで10年前に家族とともに日本にやってきたが、その4年後、祖母と血のつながりがないことから家族は帰国を余儀なくされ、中学生だった北浦さんと妹のみが日本の滞在を許されたのだそうだ。
 家族バラバラに暮らすという辛い経験をもちながら、『人は孤独じゃない』と言い切る理由はなにか?それは一番辛かったときに支えてくれた友達や仲間がいたから、”自分は人に助けられて、支えられている”と思えたからだと、北浦さんは笑顔で話す。他人が自分の事を思ってくれているから、自分も他人を信じようと思えるのだという。

 ここまでは、まぁよくある対談だなぁと思って番組を見ていた私であったが、北浦さんが親友である北本さんという同級生をつれてきたとき、私はその会話に頭を殴られたような気がした。

「ケンカって悪くないよなぁ。」
「ぜんぜん悪くないと思う。するたびに新たな一面も見えるしなあ。」
「仲直りするときに、『あんたのここが嫌やねん!』って言い合うよなあ。」
「お互い嫌なことをダーッと言って、お互いすっきりして。」

これに対して、『絶対私言えない・・・』と驚く牧田さん。

私なんか、ケンカしたら絶対悪い関係になるとしか考えてなくて、つい考えてしまう。

私もまったく牧田さんと同じだ。よくよく考えてみたら、私は”親友”と呼べる友とケンカしたことなど、生まれてこのかた一度もないということに気づき、愕然としたのだ。私はたとえ”親友”だとしても、相手の機嫌を損ねないように、顔色を伺いながらいつも空気を作っているような気がする。気まずくなったら話題を変えたりして核心に触れないようにしながら、こっそり裏で問題点を修正することが多い。これは本当の友情ではなかったのだろうか。
 親友の北本さんは言った。

 本音で言える人に出会えるって言うのは、すごいいい事っていうか、いい人に出会えたなって感じ。近くにおるかもしれへんよ、そういう人が。うちらもこんなに仲良くなるとは思わんかったなぁ。

牧田さんも感想をもらしていたが、『心の底から羨ましい』関係である。羨ましいが、やはり自分ではそんな風に心を開くことは、誰に対してもできないのではないかと思う。

 牧田さんは、中学時代の事を振り返って、気になる発言をしている。

「1人で授業中に泣いてても、誰も助けてくれなかった。居場所がなかった。」
「親に学校に行きたくないと訴えたけれど反対された。」
「悩みや辛い気持ちを人に打ち明けるのではなく、部屋で1人絵を描くようになった。」
「結局は自分で解決しなきゃいけないって思うんだよね。」

私は牧田さんの気持ちが痛いほどわかる。いったい何が、こういう言いようのない”孤独感”を育ててしまうのだろう?親との関係なのか。小さい頃の友人や教師なのか。

 おそらく牧田さんは(そして私も)、頭では北浦さんの言う『人は決して孤独じゃない』という事は理解できても、『とは言え人間は所詮1人』という考え方を抜け出す事は至難の業だろうなと思った。むしろ、逆にその思考を『いけないことじゃないか?』と思わないようにする方がいいのではないかと思った。それも”個性”なのだから。

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