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会話術の不思議
 母から電話があった。またしても外出の誘いは断ってしまったのだが、今日は落ち込まなかった。
 実は、前から試してみようと思っていた、心理カウンセラーも使っているという手法”ミラーリング”、いわゆるオウム返しのように母の言葉を繰り返しながら話を聞く、という事をやってみたのだ。

 相変わらず父の文句を言い始めた母。それに対しても、今までなら黙って聞いているか、「パパだって・・・って思ってやった事なのかもしれないじゃない?」などとフォローに回っていた私だったが、今日は変えてみた。

母 「本当に頭にきちゃうわ!」
私 「それは頭にきちゃうよねぇ。」

私が生まれる前のケンカ話も、何度も聞いてきた事だったが、初めて聞いたかのようにこう答えた。

母 「・・・なこと言われたのよ!ひどいでしょう?」
私 「うんうん、それはひどい話よねぇ。」

こんな感じで対応していった。
 すると、不思議なことに、余計にカッカするかと思っていた母の声が、次第に明るくなっていくのを私は感じた。そしてそのうち、会話の内容も徐々に変わってきた。母の両親、つまり私の祖父と祖母の話が出てきた。祖父母は昔気質の人で、世間体をものすごく気にする人だった、という話であった。初めて聞いた話だった。

母 「いつも”そんな恥ずかしい事するな!”とか怒鳴ってる父だったのよ。」
私 「”恥ずかしい事”って言われちゃったのかぁ。」

母も、親の顔色を伺いながら育ってきたんだなぁと、改めて思った。

 そして最後に、いつものようにまた父の文句の話に戻ったのだが、その時は「でもいいところもあるのよ。」という雰囲気が漂っていた。そこで私はすかさず言った。

私 「今のパパがあるのは、ママの努力のたまものだね。」
母 「そんなことないけど・・・フフ。」

母は笑っていた。

 私は、人の話を一方的に聞くのは辛いことなのかもしれないという覚悟を持って、ミラーリングにチャレンジしたのだった。だが、笑う母の声を聞いて、自分の心もほぐれていくのを感じた。相変わらず『いい子』を演じている私なのかもしれない。でもこんな『いい子』なら、自分にとっても意味のある『いい子』なら、それもまたアリかなあと思った。
 1時間の電話が、いつもより短く感じた。夕方には外に出てみようかなと、少し思った。

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