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連想検索エンジン
 昨夜の「爆笑問題のニッポンの教養」は「検索エンジンは脳の夢を見る」という話であった。先生は連想情報学の高野明彦教授。人間ならではの知性である”連想”と同じように情報をさがす「連想検索」という新しい検索システムを提唱する、次世代情報検索のニューリーダーである。

 いまや検索エンジンは、インターネットをたしなむ人間にとっては『検索なしには生きていけない(by 大田さん)』とまで思うほど、生活に必須の存在。
 私ももちろんそう。私は自分で自分の事を『検索王』だと思っている。検索するためのキーワード選びがうまいと自負しており、インターネットとパソコンさえあればわからない事はない、と思っている。だから、”次世代情報検索”と聞いてもピンとこなくて、そんなの検索エンジンが使えない初心者のためのツールじゃないの?と思っていた。
 ところが、それは違っていた。「連想検索」はこれまでの検索エンジンの概念を覆す、全く新しいものだったのだ。

 従来の検索エンジンは、世界中の400億とも言われるWebページを一通りながめて、そのデータを本の索引のように整理して1箇所に集めて持っており、ユーザーからの要求がきたら、手元にある索引をひいて検索結果を一覧で表示するものである。各サービス会社は、いかに速く探すかという部分でコンピューターの仕組みを工夫している。

 ところが、高野先生いわく、

毎日それをやってくると、「これで引けばいつでも思い出せる」となってだんだん情報を覚えなくなってくる。頭に索引情報だけ残していって、自分が検索エンジンみたいになっちゃう。そうすると、頭の中にとどめるものがすごい細切れで、文脈をもたないものになっているんじゃないかと、結構やばいんじゃないの?って思った。

私もそれは感じていた。だが、それはいい事だと思っていた。この”情報爆発社会”において、すべての情報を頭にいれておくなんて不可能だ。効率よく情報を整理するためには、インターネットに散らばる情報はすべて自分の外付けハードディスクのように使い、自分の脳の中には”ポインタ(データ本体がどこにあるか)”だけを持てば事足りる、それでいい、むしろそうしないとやっていけないと思っていたのだが。何が問題だと言うのだろう。

 高野先生は、従来のような『キーワード検索』だと、最初に表示された10件の中に答えはあるんじゃないの?と思うようになって、そこからもれている可能性をだんだん考えなくなるのが怖いという。

人間って言うのはそんなことなくて。僕らは意味のあるものだけを見ながら生活しているのかっていうと、そんなことないですよね。ほとんどが雑音で、情報が景色のように来ないとおかしい。

さらに『キーワード検索』で表示された件数がいっぱいあっても、それらをよくよく眺めるとそこにはある種の統一感があり、みな同じ情報源から発せられている事が多々ある、と先生は言う。同じ事を1000人言っているからといって1000人が独自に考えた言葉を使っているかは怪しくて、誰かが言ったことに反応していっせいに書き込みしただけかもしれない。噂話がワーッといつの間にか本物みたいになってくる。

”コピペ”で作られた情報であるということについて、僕らはあまり想像力が働かないと、それはみんなが言ってるんから本当だってなって・・・これはすごく危ない。

大田さんも「それすごく怖い!」と言う。

インターネットで、自分の悪口がうわーっと出てきたときに、これが全部だと一瞬想う。そいつは一瞬思っただけかもしれないのに、(同じような情報がたくさん出てくると)、100%こういうやつが世の中にいっぱいいるってイメージしちゃう。表情とか言い方とか声のトーンまで想像しちゃう。他の情報はとりこぼして、勝手においつめられる。

私も、自分の動画にただ非難的なコメントが何件か続いただけで、勝手に精神的においつめられたことがある。それを思えば芸能人なんてもっと大変なんだろうなと、お察し申し上げる。

 こういう『キーワード検索』をくつがえすシステムを考えた高野先生の趣味は、古本屋めぐりだという。神保町の古本屋街の約1000万冊の蔵書に潜む”知”の奥深さに惹かれるのだという。

ある意味で古本屋さんって言うのは、キーワード検索ではない面白さがそこにある。偶然の出会いもあるでしょうし、そこで思考することも、インスピレーションを得られるってことも、そういう楽しさみたいなものを体験できるんで。それと同じような興奮をウェブ上のサービスで再現できないか。

その思いが、新しいアイデアへの原動力となったようだ。

われわれ人間は、知性を持って自分で意思決定しながら生きていると想っていますが、脳科学の研究で言うと、自分の意識をどう振るかって言うのは、実はコンマ何秒か前に無意識のところで決まっていて、3つぐらい用意されている中から選ぶぐらいしか、自由意志はないとか言われている。自分のインプットにどれだけ広がりがあるかとか、どれだけ自由な発想でとりこめるかってことで、ほんとに自由意志でふれる幅がひろがっていく。

心の多様性、心の自由。まさに精神医学でいう”解放”と同じだ。心を”解放”することによって、自分で結論を出せる状況にもっていくことが「心の病」が治った状態だと、同番組のFILE015:「ひきこもりでセカイが開く時」でも言っていた。つまり、今の検索エンジンの使い方は、インターネット世界におけるひきこもりの発想なのかもしれない。

 でも高野先生は、人の発想は、このシステムだけでは完結しないと思うと最後に言った。

自分の中での物語みたいなものが必要で、他の人じゃない自分の物語だから頑張れる。そういうのを見つけるきっかけや手助けぐらいは電子でちょっとできるかもしれないけれど、本当にそれを育てていくのは、街に出たり人と会ったり、そういうくめども尽きぬものに出会って、初めて大きく育っていく。

感性を刺激するのは、やはり生身の人間じゃないと無理か・・・・。



連想検索システムのプロトタイプサイト

『新書マップ』 http://shinshomap.info/search.php
周りにでている言葉は、真ん中のテーマの中で目次に出てきたり説明文に出てきたりした言葉を拾っている。例えばユーザーの”検索”という問いかけに対して、きっとこの人はこういうのを頭に思い浮かべているな、それは言葉としては”メディア”なの?”デジタル”なの?”インターネット”なの?ってことをシステムが、ある種の連想ゲームみたいに返してくるシステム。

『想ーIMAGINE Book Search』 http://imagine.bookmap.info/imagine
異なるデータベースを横断して連想検索ができるシステム。

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