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まとまらない状態
 夕食を食べていたら突然、「ほんとにそれでいいの?」「ほんとにこのままでいいの?」と言う思念が、頭の中を支配した。明確に声が聞こえたわけではない。ただの自問自答だったのかもしれない。でも、いつもなら、考え事をしながらも他のことも同時にできていたのに、今日の私はその途端、ご飯を食べることができなくなってしまった。頭を抱えて目を閉じた。

「ほんとにいいの?」
「ほんとにこのままでいいの?」

何がいけないのかわからない。何かいけない事あったかなと考えてみたがわからない。というか、私の人生いけない事だらけで、逆に今どれを反省すべきなのかわからない。
 彼が「ちゃんとご飯食べなよ。」と言っている声が、聞こえるには聞こえたのだが、そんな事よりも「ほんとにそれでいいの?」「なにが?」の押し問答が忙しくて、返事をする余裕がなかった。

 と同時に、まだ頭の片隅に少しばかり残っていた理性が、「私、なんかおかしい。」と気づき始めた。これがウワサに聞く幻聴なのだろうか。ということは、私、統合失調症になってしまったのだろうか。でも自覚している自分もいる。これはどういう事なんだ。
 私は、状況を整理するために、わずかに残った理性をフル稼働して声を出してみた。

「私なんかおかしくなったかも。」

「どうしたの?」と聞く彼に、頭の中が「ほんとにいいの?」でいっぱいだと話をした。「どうしたんだろうねえ。」と彼は不思議そう。

 声を出して話をしたことで、気が紛れたというか、状況が整理できてきたというか、私は少しずつ平静を取り戻してきた。なんとなくわかった。考えがまとまらない状態に陥ってしまったのだ。脳の神経伝達がどこかで途切れて、情報信号が同じところをループしていたように思った。いつも通り自問自答をしていたら、その「答」を考える部分にとつぜん「問」が届かなくなってしまったみたい。「いいの?」という思いの行き場がなくなって、頭の中でどんどん増幅していた感じ。

 こわい。こわい。私はどうなってしまうんだろう。

 それからしばらくすると、次第に不の連想の連鎖が始まった。これまでに私が味わった、苦い思い出の数々が、フラッシュバックのように脳裏によみがえってきた。私がやってしまった小さな失敗、私と一緒にいた誰かがやってしまった大きな失敗。場面場面が鮮やかに思い出された。そのたびに、言葉で責めることはなくても、本当に嫌そうな顔を一瞬だけ見せる回りの人々。みな一様に笑顔が消え、顔がゆがみ、目を合わせてもくれない。そういう色々な人の表情が、一枚一枚スライドショーみたいに、順送りで現れた。
 ごめんなさい、私がいけなかったんだ。私があんな事しなければよかったんだ。全部私が悪いんだ。今こうして私が泣いているのも、誰のせいでもない。私が一人で勝手に泣いているだけだ。ということは、原因は私にあるのだ。私が悪いんだ。ごめんなさい。私なんて生まれなければよかったのに。私に関わらなければあの人があんな表情をすることはなかったのに。私なんていなくなっちゃえばいいのに。

・・・・と、昨日の夜は、ワンワン泣いた。
でも今日はまだ、生きている。

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