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メモリが消える日
2008.03.10 Mon 01:16 | エッセイ | 小説・文学
 そういえば昔、携帯電話のメモリが突然すべて消えてしまったことがあった。どうしようと私がオロオロしていたら、同期の男の子に「友達の整理にちょうどいいじゃん。」と言われた。「本当に大事な人なら、向こうから連絡くるでしょ。」
 なんてひどい事を言うんだと思ったが、確かにそれは一理あった。ある意味で『試し行動』。私にとっては、自分に主導権のない、辛い『試し行動』であった。
 そして1週間ほどで、友達の”選別”は終わった。その数はだいぶ減ってしまった。連絡が来ない人は、私からはどうすることもできなかったので、「きっと私のことなんて忘れちゃってるんだなぁ。」とあきらめもついた。

 パソコンのメモリもそうだ。何年かに一度、ハードディスクが壊れたりして、「しまった!バックアップ取ってなかった!!」なんて事がある。メールアドレスとか、過去のメッセンジャーの履歴とか、もらった写真とか、ゲームのスクリーンショットとか、そういった数々の思い出がきれいさっぱりなくなってしまう。
 でもそれもまた、心の整理にちょうどいいかなと思う。いつまでも過去の思い出にしがみついて、あきらめの悪い、未練がましい私に対する、神様のプレゼントなのかもしれない。

 デジタルメモリは、印画紙に焼いた写真がセピア色になっていくような記憶の薄れ方をしない。なくなるときはなくなる。きれいさっぱりなくなる。存在すらなかったことになる。
 今の世の中そんなもんだよと、わかったふうを気取ってみる。でも本当は・・・


とってもさびしいんです。


・・・なんて口が裂けても言えない。

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