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ブルートレイン銀河
2008.03.14 Fri 10:15 | エッセイ | 小説・文学
 ブルートレイン『銀河』が、今日で廃止されるというニュースを聞いた。

 こんな事をブログに書くと、鉄道オタクなのかと思わるかもしれないが、私は鉄道オタクではない。私の父が鉄道オタクである。そのせいか、小さいころから列車の名前はたびたび耳にすることもあった。蒸気機関車デゴイチとか貴婦人とか、実物をよく知らないなりに妙な名前だけは覚えている。
 そんな父がよく言っていた。「ブルートレインはいいよ。」「ブルートレイン乗りたいなあ。」私と姉はそのたびに、「どこがいいのよ~」「きもい~」そう言って嫌がっていたものだ。
 そうか。あのブルートレイン(の1つ)がとうとう廃止されるのか。妙に感慨深い思いだ。

 でもブルートレインって、ただ車両が青いだけの電車じゃないの?普通によく見るのだが。そんな事を考えながらニュースを聞いていたら、テレビに時刻表が出ていた。23:00に東京駅を出発する下りの『銀河』は、途中の横浜駅出発予定が23:26だという。
 ああ、それでか。私は毎日『銀河』を見ていたのだ。会社に通っていた頃、私が乗っていた横須賀線の終電は横浜駅を23:25発だった。といってもいつも電車がくるのは23:30ごろ。終電の1本前に乗り損ねると30分以上も電車がなく、ボーっと終電を待つ間、私が見ていた向かいのホームのあの青い電車。あれが『銀河』だったのだ。

 仕事で疲れ果てて、それでも頭の中がプログラムに支配されてカタカタ回転している私の数m先には、ワンカップを飲みながらこちらを見ている『銀河』の乗客がいた。何かから解放されたような、安堵の表情をうかべて向かい合って談笑する乗客たちもいた。今思えば、あそこの中だけ異空間のようだった。
 定刻になると『銀河』は静かに、本当に静かにホームを滑り出していた。周囲の喧騒とは無縁の世界だった。夜行列車には、新幹線にはない日常とは切り離された空間が確かにあった。

 1949年9月から、日本の高度経済成長期を見守ってきたという『銀河』。おつかれさまでした。一回は父と一緒に乗りたかったな。それだけが少し残念だ。

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