中西麻耶さんは、陸上短距離の日本新記録を持つ、北京パラリンピック代表選手である。
「あなたは自分を強いと思いますか?」の質問に「はい!」と笑顔で答える中西さんは、もともとソフトテニスの選手だった。高校時代は九州大会で優勝しインターハイに出場するなど、テニス漬けの毎日を送っていた。が2年前、仕事中に鉄骨が足に落ちる事故に見舞われてしまう。
そのとき中西さんは、とにかく早くテニスに復帰する道を選択したのだという。右足ひざ下の切断も、担当医が、「足を切断して義足にしたほうが退院が早い。」と言うのを聞いて「切ってください。」と自分で決めたらしい。
退院後すぐに義足で復帰したテニスだったが、いくら大会で予選を勝ち進んでもなぜか代表に選ばれなかったため、中西さんは陸上への転向を決意。そしていきなり日本記録を塗り替えた。
「嫌だとおもったことはない?」との川嶋さんからの質問に、中西さんはこう答えた。
なんと強い女性だろうか。普通の健常者の人が『もう嫌だ』とか言ったら『こらーっ』て言うじゃない?でも私が『嫌だ』と言ったところで、8割方の人がたぶん『もうやめといていいんじゃない?』って言うじゃない?
障害を持ってるっていうところで、甘くなっちゃうし甘くされちゃうところがあるから、私はそれが嫌で。常に逃げ道と隣り合わせっていうか、常に保険があってやってるような感覚があるから、それに頼るぐらいなら走るだけ。逃げ道をつくらない。
また「前向きにいられる秘訣とか方法とか考えたりする?」の問いには
そういって笑う中西さん。足がもうないのになんで生きてるんだろう、っていうのはやっぱり考える。足がないのに生きるはめになったっていう事に、何かが意味あるはずだ、生きてることに何かがあるはずだ、みたいなものを探してたんだけど、探したところでないものはないから、もう認めちゃう。
とにかく自分の弱いところも、できないところも、できるところも、私は認めてるのね。
実は川嶋あいさんは、16歳で親を亡くし天涯孤独の身となった生い立ちを持っていた。そのせいかどうしても周りを気にして、「私って一人ぼっちだし、いていいのかな?」と思ってしまうのだという。挫折を味わっても頼りにするものもなく、弱音を吐けないのだと言う。
私はまさに川嶋さんのような考え方の人間だ。もっと悲観的かもしれない。弱さを人にさらけ出すことができない。他人に助けを求めるぐらいなら、死んだほうがましだと思う。川嶋さんよりずっとずっと恵まれている境遇にも関わらず、だ。それがひどく情けなく思えた。私はね、”弱さ”の中に”強がり”があるんだよね。人に吐き出してしまえば楽になるのは絶対あるって思うんだけど、言えないんだよね。どう思われてるんだろうって気になってるところがまだあるし。
私はね、麻耶ちゃんとは違って、たぶん一生『私は強いです』って言い切る時はないと思ってる。弱さがある方が、そこにやっぱり自分自身を感じるし、自分の人生を生きていく意味を感じたりして、弱さを埋めてくために歌を歌ったりライブやったり・・・
最終日、中西さんは川嶋さんにこう言っていた。
真っ直ぐな強さで挫折を吹き飛ばす中西さん、悩んだり迷ったりしながら挫折を乗り越えようとする川嶋さん。どちらの女性も強いと思った。2人とも結局は、自分の弱さを自分自身として認めているのだから。人生にハンディキャップがあったほうが、私は全然強くなれると思うから。そのハンディを越せない人にはハンディキャップはないと思うのね。越せる人には越せるだけのハンディキャップも背負ってくると思うし。
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