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隣人祭り
2008.06.18 Wed 03:51 | ドキュメンタリー | テレビ・ラジオ
 昨夜の「クローズアップ現代」でまた新しい言葉を知った。それは、ご近所同士食べて飲んで知り合いになろうという催し─『隣人祭り』である。

 『隣人祭り』のきっかけは、18年前、パリのアパートの一室で、70歳のおばあさんが孤独死したことだったそうだ。死後2ヶ月たった彼女を発見した隣人のアタナーズ・ペリファンさんは、著書『隣人祭り』の中でこう書いている。

僕はやるせない気持ちでいっぱいになった
アパートの壁の向こうには見えない苦悩が隠されている
孤独なお年寄り
絶望した失業者
みんなを外に連れ出さなければ──

こうしてペリファンさんの呼びかけで『隣人祭り(la fete des coisins)』が生まれた。これが今ではヨーロッパやアジアを中心に世界29の国と地域、1000都市で800万人が参加するムーブメントになっているのだそうだ。毎年一回、5月の第4火曜日に開催されるのだという。
 今年は日本でも、新宿と神戸で初の『隣人祭り』が開催されたそうだ。

 日本の都会では、ご近所の人と深く関わりたくない人や、顔を合わせても挨拶もしない希薄な隣人関係が多い。これはどうやらヨーロッパでも同じらしい。

アパートの廊下ではだれにも会いませんようにと願い
隣人から声をかけられないようにいつもうつむき加減でいる
そんなことをしていて何になるんだろう
ひきこもっていても幸せになれるわけじゃない

(『隣人祭り』より)

前半2行はまさに私のようで、苦笑してしまった。
 普段は一人でいたい。けれども何かあったときに頼れる人がいない事を考えると、ものすごい孤独感に押しつぶされそうになる。こんな気持ちを世界中の人々がみな一様に抱えているのだとしたら、とても寂しい世界だ。

 スタジオゲストで明治学院大学の辻信一教授(文化人類学者)は言う。

 つながる事がこんなに難しくなってる。集う事がこんなに大変になってる。それだけ人々がバラバラになって、不安で孤立感にさいなまれてるんじゃないかと思うんですよね。
 やっぱり人間っていうのは、一人で生きられないものじゃないですか。ですからもう一回集いの場を作り出そうという、これは隣人祭りもそうですし、世界中いろんな動きとして現れている。

今の世の中でつながる事が難しいのは、世の中のスピードがどんどん加速していることも原因だと、辻教授は指摘する。

 効率的な人間の付き合いってできないですよね。今まで豊かさを追い求めて、すべてを効率化しようとしてきた生き方をこの辺で反省して、本当の生きがいってのはなんだろう?幸せってのはなんだろう?っていうところに、大きくシフトしなければいけない時が来ているような、『隣人祭り』ってのはそういうこと示しているような気がします。

教授は、人間にはみな”つながりたい”という欲求があるから、きっかけさえあれば表に出ることができるとおっしゃる。本当にそうなのだろうか。

 おそらく今の私は、たとえポストに『隣人祭り』のビラが入っていても、出て行かないであろう。それでも諦めずに誘ってくれるような、親切な隣人はいるのだろうか。そして実はそんな隣人を待ち望んでいるのだとしたら、私はなんと高飛車でわがままなのだろう。

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