2008.08.10 自殺企図
 録画していた 「NNNドキュメント'08」 の 『自殺企図〜精神科医との生きる約束〜』 を見た。

 救命救急センターに運ばれる患者のうち、自殺を図った人はいまや2割近くにも上るそうだ。藤田保健衛生大学病院(愛知県豊明市)の救命救急センター(ER)には、昨年から精神科医の赤松拡先生(35)が配置された。

 そこにある日、自宅で首吊り自殺を図ったという30歳代の男性が運ばれてきた。幸い男性の命に別状はなかった。赤松先生は、男性の両手を握りながら、『身体の症状は大丈夫?』 とやさしく聞く。次第に男性は、泣きながら心の苦しみを打ち明け始めた。
 それに対して、赤松先生は、男性の方にそっと手を置きながら話を聞いていた。

男性 『正直死にたいんですね。本当に。』
赤松 『あるよね。そしたらやっぱり今日はうちの病院で休んでいったほうがいい。経済的な問題は大事かもしれんけど、今は考えるのはよしましょう。今はとにかく命を守ることが大事だから。』
男性 『こんなもんなんでしょうかね、人生って。』
赤松 『そんなことない。きっといい方向に向かうから。今はちょっと辛いだけです。きっと楽になってくる。』

そして赤松先生は、ひざをついて床にしゃがみ、ベッドに座っている男性の顔を下から見上げながら、はっきりとした口調で言った。

赤松 『まず大事なのは、こういった自分を傷つける行為は、絶対しないって約束してください。僕らもできるかぎり力になるからね。いいかな、約束してもらえる?』

赤松先生は、こうやって患者と ”生きる約束” を交わすことについて、ご自身の考えをlこう語った。

うつになる方は、もともと責任感が強くてまじめな方が多いですから、主治医の先生と ”死なない” って約束したことが、最後の命綱になると思うんです。

退院して一ヶ月経過したこの男性は、当時の事をこう振り返っている。

 孤独にさいなまれてたんですね、すごく。もう一人なんだって。もう誰もわかってくれないんだって思って、やっぱり苦しいところから逃げ出したいっていうのがあるんですね。全てをゼロにリセットしたいっていう、そういう思いで私の場合は死を考えました。
 とことん話を聞いてくれる人間が欲しかったんですよ。あの先生がいて僕を肯定してくれたんで、すごくうれしかったですね。

あの時間あの病院に赤松先生がいてくれたことに、とにかく救われたと話す。

 じつは赤松先生は、もともと大手銀行の銀行員だったそうだ。同僚たちが次々とうつに倒れていくのを見て放っておけず、突然医学部に入学しなおして精神科医となったという異色の経歴を持つ。すごい人だと思った。人を救うために、躊躇せず自分の進路を変えてしまったなんて。そして事実、何人もの命を救っている。私がやりたくてもできないことを、いとも簡単にこなしてしまっている人がここにいた。

 日本国内における一日の自殺死亡者数は約90人だが、背後には一日の自殺未遂者が推定1000人いるといわれている(番組調べ)。私はこの多さに正直驚いた。1.4分に1人自殺を図っているということか。
 自殺の原因のうち一番多いのはうつである。しかし、そのうち精神科を受診していたのはわずか3割というデータもある(番組調べ)。私も思う。とにかく何かおかしいと思ったら、精神科を訪れることをためらわないで欲しい。精神科は怖い場所でも恥ずかしい場所でもない。うつは 『心の癌』 だ。一般人が考えているより、ずっと深刻な病気だ。けれども早期発見をすればするほど、早く治る病気だ。

 私も ”死なない” という約束を律儀に守って、今日まで元気に生きている。

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